1. トップページ
  2. >
  3. 精研の技術力
  4. >
  5. 地盤凍結
  6. >
  7. 土の凍結膨張・解凍収縮

土の凍結膨張・解凍収縮

土を凍らせると、凍結前よりも体積が増加する凍結膨張現象が起こります。
また解凍後は凍結前の状態よりも体積が減少する事もあります。 このため、近接に既設構造物が存在すると、凍上・沈下や土圧増加などが懸念される場合があります。
弊社では50年以上にわたってこの問題の解決に取り組み、今では凍結による地盤の応力・変位を高精度で予測し、合理的かつ経済的な対策を施工する事が可能となっています。
ここでは、土の凍結膨張・解凍収縮とはどんな現象か、また予測手法の一端を御紹介します。

凍結膨張とは? 〜土は、水を吸い込みながら凍結する〜

凍結膨張を左右する要因

1.土の内的要因
・土の粒径
・組織構造
・透水係数
・塩分濃度
・応力履歴    など
2.凍結時の外的要因 
・拘束応力
・凍結速度
・間隙水圧
・温度条件  など

“土が凍る”とは土に含まれる水分が凍る現象ですが、凍結前に土自身が保持する水分がそのまま凍るだけではなく、周辺から水を吸ったり、また土自身が保持する水分を排出しながら凍ることもあります。
上に示すように、吸排水を伴う凍結膨張量は多数の因子の影響を受けますが、一般的には粘性土地盤では吸水型の凍結膨張、砂質地盤では排水型の凍結膨張と考えて差し支えないでしょう。 吸水型凍結の場合には、凍土内に吸われた水がレンズ状に凍るアイスレンズと呼ばれるものが見られる場合があります。先頭ページには室内実験で観察されたアイスレンズの写真がありますので、御覧下さい。

凍結膨張率の定量把握 〜応力、凍結速度の影響〜

現場での凍上量を予測するには、まず現場土の凍上実験を行い、凍結膨張率を把握する必要があります。
凍結膨張率は、土の受ける応力(有効応力)、凍結させる速さ(凍結速度)の影響を受けます。有効応力が大きいほど、また凍結速度が速いほど、凍結膨張率は小さくなります。
有効応力、凍結速度と凍結膨張率の関係を定式化したものが上に示した高志の式で、500点以上の凍上実験から導き出されました。式中のξ0, σ0, U0は凍上定数と呼ばれ、それぞれの土に固有の凍結膨張特性を示す実験定数です。高志の式は、現場の条件に応じた凍結膨張率を定量的に把握できる、国内唯一の実験式です。
ただし現地盤の土が凍結する場合には、室内実験のように自由に吸水できるわけではなく、透水性の悪い地盤内では、動水抵抗と呼ばれる移動する距離や透水係数に見合う抵抗を受け、吸水量が低下します。そのため、現地盤での凍結膨張率は室内実験よりもかなり小さくなります。

関連文献

地盤各方向への凍結膨張変位の分配(三軸凍上特性)

高志の式に代表されるこれまでの凍上研究は、いずれも凍結体積膨張率を扱うものです。
しかし凍結工法の現場で凍土を造成した場合、凍結膨張は地盤の各方向へ生じるので、凍結線膨張率を把握することも、凍結膨張による影響を予測する上では重要です。
上の図は、熱流(凍土成長)方向、熱流と直角方向の応力をそれぞれ任意に設定して、各方向への凍結線膨張率を測定した、世界初の実験(三軸凍上実験)です。
この実験を基に、応力と凍結線膨張率との関係を表す三軸凍上の実験式が導かれ、応力条件に見合う各方向への凍結線膨張率を求めることができるようになりました。
この実験式に、さらに間隙水圧の変化や凍結膨張圧など、現場で生じる有効応力の変化を取り入れることも可能になり、その結果、より高精度な地盤変形予測を行えるようになりました。

関連文献

凍土の博物館(凍結性状データベース)

現場での凍結膨張や解凍沈下を精度良く予測するには、現場試料土による凍上・沈下試験を行うことが必要です。では、試料土を採取しない限り、現場予測をすることはできないのでしょうか?
この要求に応えるのが、50年以上にわたる現場試料土に関する凍結試験結果を基に構築された、凍結性状データベースです。日本各地から採取された約500種類の土に関する2000点近くの試験結果が収められています。
本データベースを活用することにより、試験を行う前でも、ある程度の現場予測を行うことが可能となっています。

関連文献